以前に買って一度読み、そのまま本棚の奥のほうにしまい込んであった作品を引っ張り出して再読。楳図かずおの怪作、『わたしは真悟』

『わたしは真悟』
マリン、ボクハイマモ・・・ キミヲ アイシテイマス

もう・・・なんて表現していいかわからない。この作品はいわゆる「ホラー漫画」とは異なります。しかし読後背筋に寒いものが走り抜けていく感触に身悶えしました。その感覚は恐怖・・・というより畏怖・畏敬といった表現のほうが近い。この作品は奇書に分類されるべきものです。

社会科見学に行った工場で偶然出会った小学生のさとるまりんは運命的な恋におち、工場のロボットに自分たちの情報を記憶させる。
その後両親の都合でイギリスに行くことになってしまったまりんさとると2人で大人たちの手から逃げ、結婚して子供を作りたいと願う。
2人は工場のロボットに子供の作り方を尋ね、機械が答えた奇妙な方法を実行したとき、工場のロボットに意識が芽生える・・・。


このロボットが自分で自分に「真悟」と名前を付けるわけですが・・・。
狂気といっても差し支えないほどの巨大な妄想。それは『14歳』でも顕著にあらわれていましたが『わたしは真悟』のほうがよっぽど難解です。文庫版で全7巻というなかなかのボリュームですが、淡々と綴られる奇妙な物語の静けさがかなり不気味。『14歳』は奇想天外な妄想が次々と炸裂して展開しますが、こちらはそれとは逆に「静」の趣が強く、全体にスローペースでテーマも絞られています。

しかし小学生が子供を作る・・・というモチーフからもにじみ出ていますが、作品全体にかなり楳図御大の鬱屈したリビドーがみなぎっているような。「子供」という時間に生きるものをことさらに持ち上げ、作者自身が属する大人社会、そして日本が自虐的なまでに悪し様に描かれており、なにか病的なものを感じずにはおれない。
この鬼気迫る自己否定と自由な発想はどう考えても常人には辿り着けないところのもので、真悟を通して描かれた抽象的な物事すべてを理解しようとするには自分は少々歳を取りすぎたようです。
これは「何となくゾッとする愛の物語」ってくらいの理解で充分でしょう。

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2008.09.05 Fri l マンガ紹介 l COM(0) TB(0) l top ▲
ちょっと前から話題になっている石川雅之『もやしもん』を買ってみた。


amazonもやしもん―TALES OF AGRICULTURE (1) (イブニングKC (106))

ウンチクもココまでくると芸だな、って感じのマンガです。主人公は身の回りの細菌を肉眼で見ることができる特殊な能力を持っていますが先輩や教授の濃いキャラクター性に完全パワー負け。存在感はほとんどサブキャラ扱いです。

作中では菌が可愛らしく擬人化されて特性に沿って色々しゃべったりして非常にコミカル。それに反してストーリーをちょっとハズれてウンチク・モードに入ると話が長い長い。発酵食品の歴史から文化としての成り立ち、果ては流通の現状まで大いに語りまくります。特にに関しては興味のない者にはツラいくらいの情報量でページを費やします。知的好奇心なしには読めないマンガ。活字ギライでマンガを読む人もアウトです。

意味もなく美形ばっかり出てくるマンガや美形しか描けない作家は嫌いですが、なんだろうなぁ・・・この人の描く女性キャラは可愛く描いているんだけど残念ながら可愛くないという感じ。そういうマンガでもないし、だんだん見慣れてくるからいいんですけど。
上の説明だとなんだかカタッ苦しくて面白くなさそうですがそんなことはなく、ジンワリと、そこはかとなく面白いマンガです。自分でも不思議ですがチマチマ買い足して気がつけば最新刊まで揃ってます。

1冊読むのにこれほど時間がかかる青年誌の単行本ってなかなか無いです。『もやしもん』1冊読むあいだに『のだめカンタービレ』4冊は読めます。士郎正宗は別格ですが、それに近いウンチク系のマンガがお好きな方には超オススメ。

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2008.08.26 Tue l マンガ紹介 l COM(1) TB(0) l top ▲
きました、ガロ系。先日しゃいけ様に教わったマンガをさっそく入手してみました。
単語と単語をシャッフルして偶然できたようなタイトル、泉昌之『かっこいいスキヤキ』
管理人伊藤(仮)をして一撃で「買い物かご」をクリックさせた表紙がこれだ!

 かっこいいスキヤキ (扶桑社文庫)
「みんなテメーがどれだけ肉喰うかばかり考えやがって」

・・・くだらない・・・。こんなにくだらないマンガは読んだことがない・・・!

だがそれがいい

こういっては何だが、この作品内では何ひとつ特別な出来事は起こっていない。しかし「メシを喰う」という人間にとってごく日常的な風景に落ちる、哀愁を帯びた男の影・・・。無意味な情熱とダンディズムが織りなすドラマツルギー。やったモン勝ちの世界といって差し支えない。

この短編集のキモとして、忘れることが出来ないのがやはり「夜行」です。これ大好き。
夜行列車で旅をするトレンチコートの男が途中で買った400円の駅弁をいかに食べるかという、ただそれだけの話。そのシーンだけで16ページも描ける神経をまず疑わずにはおれない。

他にも「最後の晩餐」「POSE」など、基本的に個人としての過剰な思い込みがブザマな暴走を招くショート・ストーリー。「プロレスの鬼」はスピーディーな展開に反してまさかと思うほどくだらないオチだったり。爆笑タイプのギャグではありませんがくすぐるような笑いがこみ上げます。
伊藤(仮)もオリンピック中継そっちのけで読んでいたら知らぬうちに口がニヤけているのを家族に注意されました。
授業中や仕事中に隠れて読むといっそうスリルが楽しめそうな作品です(笑)

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2008.08.10 Sun l マンガ紹介 l COM(0) TB(0) l top ▲
あまりに多すぎる本・マンガ類の整理のため本棚をあさっていたら懐かしいマンガが出てきました。
日本橋ヨヲコ『極東学園天国』(全4巻)。

7&Y
「たましいがくさるから」(作中より)

上のセリフの部分だけ読んだブロッケンにさんっざん茶化されてお蔵入りした思い出深い作品。
青臭い主張に耐えうるっていうのは「若さそのものの為せる技」であり、ひいては「当時の感覚へ思いを馳せる能力」だと思います。
改めて読むと確かに、確かに赤面モンのやりとりの応酬です。生かして置けねえ

・・・確かに自分も学生時代には性善説を信じる友人を積極的に罵倒したり論破したりしましたよ!(※友人は3年目にアンチ性善説に改宗しました。)それが友人であろうと国家元首であろうと「美しい国にしたい」などと眠たいことを抜かせば寄ってたかってツッコミを入れるのが正しいオトナの姿勢です。でもそれはあくまで現実世界でのお話。むしろ現実ではあり得ないからこそ虚構世界にそれが描かれるのだと思います。

さて、あらすじ。

義務教育が高校まで延長された仮想の日本。”徴学制”によって集められた不登校や問題児、学力が劣る者などを強制的に収容する閉鎖型の全寮制高校「私立五色台学園」が舞台。
やがて教育委員会は自らが切り捨てたクセ者揃いの学園から突出した才能が輩出されるのを恐れ、五色台学園を廃校にすべく動きだす・・・。


宗田理の「ぼくらの七日間戦争」みたいなノリです、要するに。支配する側へのささやかな抵抗。
これを「ハナタレ小僧のたわごと」と呼ぶか「ロック」と呼ぶかは受け取る側次第。

・・・「ロック」はさすがに言い過ぎですが、現実でも虚構でも「抵抗」できないってのはあまりに夢がなさすぎると思いますのでこういうユートピアがあってもいいと思います。


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2008.08.05 Tue l マンガ紹介 l COM(0) TB(0) l top ▲
話がなかなか見えてこず、完結までレビューを保留していた作品をついにピックアップ。
遠藤浩輝『EDEN』(全18巻)です。

 EDEN(18) 7&Y
「新しい宇宙の『神』に選ばれた気分はどうだね?」(作中より)

長かった・・・。月刊誌で実に11年を経てついに完結!最終巻を読んでやっと「はあ、そういう話だったのか」と思った次第。
しかしそれだけ長い期間があっただけに、物語が当初とは違う落とし所に落ち着いてしまったような感じもあります。少なくとも、序盤の電子戦(?)を含めた未来感あふれる戦闘シーンで読者が期待した話とはズレてる気がする。

とはいうものの、連載中の11年間、世界は激変しました。同時多発テロ、温暖化、エヴァンゲリオン。思うにこの3つが現代という時代のリアリティを表面化させてしまったんじゃないかと思います。国家・地球・個人、どのレベルでもヒステリックな緊張感をはらみ、危うい均衡の上にあると意識せざるを得ない時代に入ってしまいました。
そう思うと当初の想定を超えた着地点を模索しなければならなかったのも必然というものか。
そういうわけで内容を説明するのは難しいけど以下軽いあらすじ。

人体を硬質化させ死に至らしめるクロージャー・ウイルスの大発生により世界人口が減少した未来、
未曾有の危機に際し世界の統一を目指す「原父連邦」とそれに対抗する組織「ノマド」。
生まれながらにウイルス抗体を持ち、危機を生き残ったエンノイアとハナの間に生まれた長男エリヤは原父連邦から逃れる道すがら、ある少年の遺体から謎のディスクを発見する・・・。


これでだいたい合ってると思うが・・・ってこりゃホントに話の入り口も入り口、導入部分。
設定は凝っているので設定マニアにはウンチク多くてお勧めできます。

しかし理系で大マジな本筋とは別に、物語内部の個々のドラマが光る!本作の魅力はむしろそっち。登場人物の背負うバックボーンや、彼らの行動がもたらす結果は様々なドラマに満ちている。硬質なアクションシーンも個人的にけっこう好み。
なかなかシビアなストーリーですが、骨太な近未来アクションドラマをお望みならコレです。

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2008.07.30 Wed l マンガ紹介 l COM(2) TB(0) l top ▲