映画『シン・ゴジラ』 

 遅ればせながら、庵野秀明の『シン・ゴジラ』を観てきた。


カッコイイ・・・


 もうね、ゴジラの目が逝ってるとか腕が小さいとかはどうでもいい話。歴代最強のゴジラと現代装備の自衛隊、そして事態対応のために奮闘する大人たち。すべてがカッコイイ。その一言に尽きる。


 コントロール不能の圧倒的なチカラ、自然現象による被害を「天災」という言葉で受け入れてきた日本人にとって、今回のゴジラはまさに神にも等しい領域に達した存在。
 日本神話の神々は水飛沫や火の粉などから生まれるが、核廃棄物を出自とするゴジラはまさに人間と自然の間に生み落とされた私生児にして「八百万プラス1番目」の最新の神だ。神殺しが人類の宿業とはいえ、今度は子殺しを為して生存を勝ち取らねばならないという皮肉。

 人類の罪と自然への畏怖、ゴジラとはこれぞ、というテーマを現代解釈で深く抉った社会派怪獣映画の金字塔だ。
 『シン・ゴジラ』は世界でもかなり特殊な国家である日本でしか成立しない葛藤やドラマがある作品だが、それでいいのだと確信させてくれた邦画として記憶されるだろう。


※以下、ネタバレあり


 いやぁ、やってくれるとは思っていたが日本映画やアニメのオマージュを思わせるシーンが多くて大満足。
 アニメを知らない映画ファンにはわからないシーンも多いだろうが、小難しいアート気取りの邦画もマニアしかわからないオマージュだらけなんでアニメ業界からの粋な挨拶といったところだろう。

 一番わかりやすいのは複数のアレンジパターンで繰り返し流されたエヴァっぽい作戦BGMと戦車やヘリなどの攻撃シーンだろう。
 『劇場版パトレイバー』の帆場暎一は知ってる人だけ気付く程度だろうが、やはりさすがにゴジラで『イデオン』はビックリした。ゴジラのオールドファンには放射火炎以外の新能力は賛否ありそうだが、今回は序盤で「巨大生物の生態がまったくわからない」「進化の先が予想できない」と念入りに描かれたので自分は違和感なく楽しめた。


 何でもかんでもエヴァに結びつけて考察することもないのだろうが、人類とゴジラの関係を親子と考えれば父と子の相剋はエヴァのメインテーマのひとつでもあるし、『新劇場版ヱヴァンゲリヲン』では「神殺し」もキーワードになっているので深読みする余地はけっこうありそう。制御下にある圧倒的なチカラ(ヴンダー)を「神殺し」と呼んでいるのも、科学技術による自然の克服と通じるものがある。


 ま、それらはおいといて。ゴジラの上陸と政府・行政の対応は混乱ぶりも含めて極めてリアルな描き方がされており、また有事の際に動ける組織は自衛隊だけだということを明確に示した。
 これまでの平成ゴジラは「スーパーエックス2」だのといったトンデモ兵器を出したり、結局人類は打つ手なくゴジラが別の怪獣と戦って消耗し勝手に帰っていく幸運&他力本願なところがあったが、日本国が国民の生命財産を守るために知恵と勇気を総動員してゴジラ撃退に漕ぎ着けたのは記念すべき光景だった。

 事実上の軍事防衛シミュレーション映画として日本人の国防意識の甘さとその危うさ、対応マニュアルの不備などを暗に指摘しつつ自衛隊の存在意義と活躍、さらにアメリカと国連の高い危機管理意識、米軍との軍事格差を見せつける内容でもあったので、「中国・北朝鮮・ロシアは攻めてこない」と根拠なく叫んでいる人らは発狂しているのが目に浮かぶようで痛快である。
 近隣諸国が日本に攻めてくる可能性は東京湾にゴジラが出現する確率よりは遥かに高いわけで、実際に最近の中国の海洋侵犯や北朝鮮のミサイル発射は異常な状況。なかなかタイムリーな内容だった。

 あとは人間の八倍の遺伝子量というくだりと、ラストシーンに映しだされたゴジラの尾の先端。人骨のようであり背ビレからゴジラ細胞を有しているようでもあり・・・というなかなか謎めいた終わりかた。
 G細胞プラス人間と薔薇の遺伝子で作られたビオランテや、地球外生命体にヒトのガン細胞を組み込んだ『劇場版パトレイバー3』の廃棄物13号を思い出させる。人類とゴジラの親子関係が比喩ではなく、生物学的にも遺伝情報を共有する部分があるのかもしれない。
 
 これまでの平成ゴジラは途中から電波ゆんゆんのシナリオ合戦(良くも悪くも)で開いた口が塞がらないネタ映画シリーズと化していた。
 仮に庵野秀明の『シン・ゴジラ』が別解釈の新シリーズとして展開するなら、『シン・キングギドラ』や『シン・メカゴジラ』『シン・モスラ』などがどのように描かれるか非情に興味がある。シン・メカゴジラは人間と同調して操縦するバイオゴジラになったりして。あの尻尾ラストはその伏線とか・・・。創造は膨らむばかりだ。
[ 2016/09/05 21:43 ] 映画・アニメ感想 | TB(0) | CM(0)

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